【羽化の作法 67】現在編 再調査「水からの伝言」

こんにちは! 今年の夏は暑かったですね。30度だと涼しく感じてしまうくらいでした。

ところで、「羽化の作法[63]ポスト・トゥルースと水からの伝言と私」で「水からの伝言」について言及してしまったことが気にかかっておりました。


ふと思い付いてタイトルにしてしまったのですが、もうちょっと調べようと思いました。


●やればいいじゃん「水からの伝言」反証実験

『水からの伝言』は故・江本勝氏の著書である。
ウィキペディアには、こう書かれている。

「名勝の水や『ありがとう』等の言葉を見せた水からは綺麗な結晶ができ、水道水や『ばかやろう』等の言葉を見せた水からはいびつな結晶ができるといった、科学的には荒唐無稽な話が写真と共に語られる。」

科学的には荒唐無稽な話が写真と共に語られる。」と言う言い回しに吹き出してしまうのだが、この江本勝氏の活動の熱心な支持者の一人が、現在我が国の首相夫人・安倍昭恵氏である。そのことを示すこんな記事がある。


「波動」というオカルトを信じる昭恵夫人
記事から一部引用します。

「実際、昭恵夫人は、江本氏が主宰する『国際波動友の会』の機関誌において、『江本先生のおっしゃる水・意識・波動の話は正しいと直感しています』と述べている。たんに共感しているだけではなく、江本氏とは直接に付き合いがあったようだ。昭恵夫人からは義父にあたる故安倍晋太郎氏が、江本氏から波動を調べてもらい、『転写水』を作ってもらったこともあったという。」

転写水」が気になるが記事にはこう記してある。

「転写水と聞いても、多くの人たちはいったい何のことかと思うだろうが、これはオカルトやスピリチュアリズムの世界ではよくみられるもので、人間の発する気をこめた水のことである。その水には、病を治したり、健康を増進したり、さらには幸福をもたらしたりといった効果があるとされるのである。」

人間の発する気を込めた水だそうだ、、、一体いくらするのだろう?信じるならばプラシーボ効果で、本当に病が治ったりするのでしょうね。

また、こんなツイートもある。


これらの記事やツイートにあるように、「水からの伝言」著者の江本勝氏は政治権力とも近かったようです。もし政府が「水からの伝言」の思想を採用すれば、「波動」は国民が信じるべき真理となったかも知れない。

「エレクトリカルな大都市として有名な《TOKYO》を首都に持つ日本は、意識の波動で統制されたスピリチュアル国家だった」なんて設定のアニメがあったら『AKIRA』みたいで、ちょっと観てみたい感じはする。

とは言うものの、日本は今も昔も充分にスピリチュアルなのかも知れない、とも思ったり。

「水からの伝言」をグーグル検索するとトップの方に出て来るのがこちら。科学者からの批判である。

「水からの伝言」を信じないでください
引用します。

「これまでの科学の知識から考えれば、水が言葉の影響をうけて結晶の形を変えるということは、けっして、ありません。本や写真集には、実際に試してみたという『実験結果』がのっています。でも、これは、実験する人の『思いこみ』が作りだした『みかけ』だけの結果だと考えられます。ただの『お話』と思って聞くならいいかもしれませんが、事実だと思うのはよくないでしょう。

それに、どんな言葉が『よく』で、どんな言葉が『わるい』かは、私たち人間がいっしょうけんめいに考えるべき、人の心についての大切な問題です。水に答えをおそわるような問題ではないはずです。また、『きれいな結晶なら、よい言葉』というように、見た目のきれいなものが『よいものだ』と決めているのも、私には、おかしく思えます。ものごとを、見かけだけで決めてしまっていいのでしょうか?

人の心は、すばらしい力をもっています。ほかの人たちを思いやる心、愛と感謝の心は、とても大切です。しかし、それと『水が言葉の影響をうける』という『お話』には、なんの関係もありません。

私たちは、学校の授業など、教育の場に『水からの伝言』をもちこむのは、絶対によくないことだと考えています。」

と、もっともなことが書いてあります。おっしゃる通り。これに対して、ツッコミを入れるブログがあったので紹介します。

「『水からの伝言』を信じないでください」と言うのならやるべき事は一つだろう?

「やればいいじゃん反証実験。その結果を示すだけで、ごたくを並べなくとも完膚なきまでに否定できるじゃん。」

と、バッサリ。思わず「あはは、その通りだわ!」と笑ってしまいそうになる。なら私がやってみようかと思ったがちょっと面倒臭い。と、思ったら実験してた人のブログを見つけたので、こちらを紹介します。

【実験】バナナにいろんな言葉をかけてみた話

このブログ主はバナナを6切れ使い、6パターンの言葉をかける実験をやっている。かける言葉は以下の6種類である。


実験開始の状態はこちらのツイートに。


そして、結果の画像はこちらのツイート。

以下ブログより。

「一番黒くなったのは『D』です。次点が『A』と『E』と『F』、そして『B』、一番きれいなのは『C』ですね。(中略)もしかしたら、バナナは外国産だから英語じゃないと理解できないとかそういうオチかなぁ? バナナは日本語を理解できないという興味深い仮説ですね。

スペイン語や中国語だったらどうなるんでしょう。とりあえず日本語だと『きれいな言葉のAバナナ』より『汚い言葉のBバナナ』のほうがなんとなくきれいな気がします。これは説明のつかない不思議な現象ですね。」

こう書かかれています。個人的には「E:卑猥な言葉」の選び方が生ぬるい感じがしましたが、その言葉をもっとディープにエグくさせたところで、実験の結果は変わらないと思われます。

要するに、かける言葉の意味・内容で物理現象は変化しない。かけ声の音の高さや音量、口から飛び出す唾液などで変化することはあるにしても。これは普通に当たり前のことでは、ある。

また、お花に「ありがとね」と言いながら水やりをするときれいに咲くし長持ちする、なんていう話はよく聞く。

お花に話しかけるほどの人は、花を枯らせない方法を調べて実行してるワケで、当然と言えば当然だ。

だけど、その人に「花に良い言葉をかけたから長持ちしてるのではなくて、適切な処置をしてるから長持ちしてるんですよね」なんて言ったら機嫌を損ねかねない。ひょっとしたら、本当に言葉をかけると長持ちするかも知れないし、何よりその人の花に対する愛があってこそなのだから。

この場合、問題になるのは「ありがとうと花に声をかけて水やりをする人を分析する客観」と「ありがとうと花に声をかけて水やりをする人の主観」の齟齬で、これがなかなか難しい。


●事実と真実とを再編成している時代

「ファクト」と「主観」が入り乱れてしまうと混乱が起きる。人は誰でも「ファクト」よりも「主観」を優先する。人は「主観」を「真実」に据える。私が見たあの日の夜の美しい月が、私にとっての「真実」なのだから。

政治でもそうだ。それを「ポスト・トゥルース」と呼ぶのだろう。

「ファクト」と「トゥルース」は引き裂かれ、「ファクト」はゴミ箱行きになり、感情が「トゥルース」となって投票を行う。

IT最先端のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)を産むアメリカから、一方でファクトがおざなりになった感情投票で大統領が生まれる。

今は「事実(ファクト)」と「真実(トゥルース)」を再編成してる時代だと思う。

科学は客観的な真実を記述してきた。というか、「真実は客観的に調べたところにある」と定めた。

例えば、天体は観測によってその運行は影響されない。天体観測データによって、かつて常識だった天動説は誤りで地動説が正しいという事実を突き止めた。そしてこのパラダイムシフトは、「真実を解き明かす科学」の原型として、今でも引き合いに出されます。

もちろんパラダイムシフトはとても重要です。しかし、「観測者が対象の外側にいるのが科学の原型」と限定してしまうと、ますます「ファクト」と「トゥルース」の乖離や混乱は増すばかりだと思うのです。

「調べたい謎」または「科学で解き明かしたい問題点」はむしろ、観測者が観測対象のフレーム内に放り込まれている環境の方が多いのではないだろうか? そうすると「主観」を科学しないとならないのではないだろうか?

私が意識(の科学)に並々ならぬ関心があるのは、科学が意識という主観領域に踏み込んでいるからである。

江本勝「水からの伝言」は科学ではない。これは確かだろう。科学者のほとんどは「水からの伝言」を上記の「『水からの伝言』を信じないでください」のように批判するか、または鼻で笑うだけかも知れない。

がしかし「水からの伝言」のようなことこそ、これから科学で取り扱う分野のような気がしてならない。

もちろん、そういった分野の研究がない訳ではないようです。どうやら最近、幸福を科学として研究することが増えてきているようなのです。

2018年8月17日掲載の広島大学の研究結果。

“幸福感”は年収の高さに依存するのか? 〜心理的傾向「マインドフルネス」の影響を初めて解明〜

  • 一般に収入の高い人の方が、幸福感が高い傾向にあります。しかし『マインドフルネス』という心理的な傾向の高い人は、収入の多い少ないにかかわらず、高い幸福感を感じていることを大規模な調査によって解明しました。
  • 『マインドフルネス』傾向は、トレーニングで向上させることもできます。今回の結果は幸福にいたる多様な道筋があることを示唆しており、ワークライフバランスや過労の問題など、働く人の多くが直面する問題へのよりよい解決の糸口につながることが期待されます。

つまり、
マインドフルネス傾向の高い人は、年収に左右されず幸せな傾向。
マインドフルネス傾向の低い人は、年収が高い人ほど幸せな傾向。
ということです。

ここで私が面白いと思ったのは【参考資料】のグラフです。

図1 自分の体験を批判的に見ない人は収入と関係なく幸福感が高い(赤い点線)。

図2 自分の体験を言葉で表現するのが得意な人は収入と関係なく幸福感が高い
(赤い点線)。


過去を省みず自分の出来事ばかり喋る人っていますよね。デリカシーがない印象を持ってしまうのですが、そういう人こそ幸福なのであります。

話を「水からの伝言」に戻します。
「水からの伝言」には三つの疑問があると思います。

1)水は情報を保存できるのか?
2)言葉の意味、つまりは意識で物質が変化するのか?
3)プラシーボ効果以外で病を治す水があるのか?

私は内心「3つともYesだといいなあ」なんて思ってたりします。それは、どれかひとつがYesでもすごいことだからです。

1)は結論がそう遠くない将来に出るような気がします。
2)は難しい。そもそも意識がなんなのかが分かってないですもんね。
3)は希望です。

あなたはどう思いますか?


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