【羽化の作法 105】現在編 疫病を肯定してみた

花束を投げるアマビエタムちゃん

「非常事態宣言」は、ここ上尾の街にも影響が出ています。コンビニは即座にレジ前に透明ビニールを張り、客と店員を遮断していました。駅の商業施設「イーサイト上尾」も閉館、駅前のイトーヨーカ堂もスーパーのある地下一階以外は閉館しているとのこと。

私と関係のあるギャラリーなどは、いまどうなっているのでしょう?


●コロナへの対応


〈代官山・アートラッシュ〉


ガブリエルガブリエラと私がお世話になっている、アートショップ『代官山・アートラッシュ』( https://twitter.com/artsrush )は営業時間を10〜16時と短縮してオープンしています。

『時短のお知らせ:拡散希望いたします!!』
https://ameblo.jp/arts-rush/entry-12587992027.html

“お心惹かれた作品が有りましたらどうぞ遠慮なく、お電話・メール等でお問い合わせ下さいませ。出来る限りの対応をさせて頂きます!”と書いてあるように、問い合わせに対応できる体勢を整えて営業しています。


〈参宮橋・ピカレスク〉


私の作品を取り扱って頂いている『参宮橋・ピカレスクギャラリー』( https://twitter.com/picaresquejpn )は『オンライン・ライブ・ギャラリー』として生まれ変わるようです。


[4/13-4/19]ライブ配信予定
https://picaresquejpn.com/2020_04_09_13_online/


〈上尾・13月世大使館〉


そして私とポオ エ ヤヨさん( https://twitter.com/Poelett )で運営している『上尾・ギャラリー13月世大使館』ですが、4月のオープン・デイを休廊して予約のみとし、まずは引き籠って制作することを優先することにしました。余裕ができたら、ライブ配信やネット販売をしているギャラリーやショップを参照しながら、ネットでの作品紹介や販売をして行く予定です。



三者三様ですが、これら非常事態宣言を受けての対応は暫定的ではなく、これからのスタンダードになるでしょう。この時期の行動が将来を方向付けます。

多分、元に戻らないですよね。変更したらそれらをベースにして、これからを生きるのです。この状態は一見試練のように見えますが、「自分が本当に大切にしたいこと」に気付いて、そっちにシフトするチャンスなんだと思います。


●ウィルスの捉え方


ところで、歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』にはこう記されています。

人類は三つの課題「飢餓」「伝染病」「戦争」と闘ってきた、と。そして今、この三つの課題は克服された、と。で、ほんの一握りの上層階級の人類は「ホモ・サピエンス」から「ホモ・デウス(神)」へとアップグレードするだろう、と。そして、アップグレードできずに「サピエンス」のままでいる大多数の人類は、無用階級となって滅びるだろう、と。

(かなり乱暴にまとめてしまって申し訳ないのですが、本書は物凄くエキサイティングで面白いので、未読の方はぜひ読んでみてください)


この本は2018年に出版されたのですが、2020年、まさかのパンデミックです。この新型コロナウィルスの感染は、ガッツリと全人類規模で流行しています。人類は伝染病の課題を克服なんてできてなかったのです。

私は新型コロナウィルスに慄きながらも、ユヴァル・ノア・ハラリの指摘が外れ「サピエンス」は「デウス(神)」には(当分)ならないことにちょっと安堵しました。天才学者も間違えるんです。読みが甘かったな、ユヴァル・ノア・ハラリくん(笑)

そして、このウィルスは本当に「人類の敵」なのか? という疑問も沸いてきます。生物学者の福岡伸一さんのコラムを抜粋します。

ウイルスは構造の単純さゆえ、生命発生の初源から存在したかといえばそうではなく、進化の結果、高等生物が登場したあと、はじめてウイルスは現れた。
高等生物の遺伝子の一部が、外部に飛び出したものとして。
つまり、ウイルスはもともと私たちのものだった。
それが家出し、また、どこかから流れてきた家出人を宿主は優しく迎え入れているのだ。なぜそんなことをするのか。
それはおそらくウイルスこそが進化を加速してくれるからだ。
親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか伝わらない。
しかしウイルスのような存在があれば、
情報は水平方向に、場合によっては種を超えてさえ伝達しうる。
4月6日:朝日新聞「ウイルスは撲滅できない」福岡伸一さんが語る動的平衡
https://www.asahi.com/articles/ASN433CSLN3VUCVL033.html


垂直は子孫、水平はウィルス。そうやって生物は遺伝子を変化させてきたのです。

まるで中島みゆきの『糸』ですよね、これ。
なぜめぐり逢うのかを
私たちはなにも知らない
いつめぐり逢うのかを
私たちはいつも知らない
どこにいたの生きてきたの
遠い空の下ふたつの物語
縦の糸はあなた
横の糸は私…
福山雅治バージョンを貼っておきます

福山雅治 魂リク 『糸/中島みゆき 』(歌詞付)2015.01.31

縦の糸(子孫)と横の糸(ウィルス)で、生物多様性という美しい布を織り成してきたこの星。そう捉えると、怒りや不安も少し和らぎませんかね?

実際にこの福岡さんの記事の紹介ツイートをしたら、「良い記事のご紹介有難うございます。実に面白いです。ウイルスで死ぬのが怖くなくなったくらい面白かったです。」とリプライをもらいました。


「科学は冷たい」イメージもありますが、不安や恐怖を軽減させる効果もあるのです。ここでかなりざっくりとですが、伝染病のポジティブな側面をあげていきましょう。


●労働者の権利が生まれた!


「中田敦彦のYouTube大学」に、以下の動画があります。面白いのでぜひ観てください、オススメです。

【世界を変えた感染症の歴史 1】〜想像を絶する人類の戦い〜

【世界を変えた感染症の歴史 2】〜感染症を正しく恐れるために歴史に学ぶ〜


まず興味深かったのは、ペストによって「中世が終わる」ということでした。そして農奴制が崩壊し、労働者の権利が生まれる、と解説しています。パンデミックによって社会構造が変わるのです。


●科学が進歩した!


14世紀ペストから時代はくだりますが、17世紀のペストで大学が二年閉鎖され、実家に引き籠ったことによって世紀の大発見をするニュートンの例があります。
ニュートンのWikipediaには、
“「ニュートンの三大業績」とされるものは、いずれもペスト禍を逃れて故郷の田舎に戻っていた18か月間の休暇中になしとげた”
とあります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B3

これで思ったのは、科学も芸術も膨大な暇から生まれる、ということです。誰もが忙しい競争社会では、リーズナブルなものは生まるかも知れません。でも、本当に面白い創造性豊かな発見や創作には、「暇な時間」が必要なんですよ。

日本も思い切って二年くらい大学を閉鎖したら、ニュートンみたいな人が出てくるのかも知れません。ただ、ここで重要なのは、ニュートンは奨学金を得ていたことです。ちゃんと生きて行ける状態で、時間がある。食えない不安に苛まされながら、時間だけがあっても、それでは苦しいだけなんだと思うのです。

暮らしの保障がされていて、かつ暇がある。これが今の私たちにとって一番必要なことではないでしょうか。


●ルネサンス!


ペストとルネサンス、時期が重なっているので関係はあるでしょうけど、どう関わりがあるのか? ちょっと面白いテキストを見つけたので引用します。

“また、14世紀にペストが大流行した欧州では、イタリアを中心に大勢の死者が出ましたが、この時期に同国からルネサンスが始まったのは偶然ではないと思います。
人口が激減し、国力が衰えて没落してもおかしくなかったイタリアで、「再生」を表す芸術運動が興り、欧州中に広まったのです。
なぜ人口が減ると文化が発達するのか。思うに、人口が増加する時代にはモノを増産して消費も増え、経済がどんどん拡大していきます。
一方、人口減少社会では生産量を増やす必要はなく、人口が減ることで一人当たりの所有物が増えます。”
https://diamond.jp/articles/-/70896?page=3

ルネサンスはペストによる人口減少によって勃興した、と。もちろんそれだけじゃあないでしょうけど、大変興味深いです。

ペストもコロナもイタリアで甚大な被害が出ています。歴史は繰り返すとしたら、これからルネサンスに匹敵する世界規模の芸術運動が起こるのかも知れませんね。

ルネサンスの特徴はなんといっても「これまで絶対だった神から人間にフォーカスが当たる」ことです。支配から解放される。なので、同様なことが起こるのでしょう。「中世の神」に匹敵するような価値観はなんでしょうかね、「通勤・通学」かも知れませんね。

〈メメントモリ〉
「死を想え」芸術によく出てくるこの主題もペストがきっかけです。この言葉、古代ローマでは「今を楽しめ!」という意味だったそうです。

それが、「神を信じると死後天国、信じないと死後地獄に行く」キリスト教によって「現生のことではなく死後のことを考えろ」という、まるで逆のような意味合いになります。

現代では「死を意識するとパフォーマンスが向上する」という、機能的な側面が加わるのかも知れません。いずれにせよ、疫病が想像の深淵なる扉を開いてきたことは確かです。

これまで疫病のポジティブな側面を書いてきましたが、新型コロナウィルスはひょっとしたら、自然と対立してしまった人類の軌道修正をしているのかも知れません。


●コロナは地球にやさしい!?


まず、人類の活動が低下したことによって、CO2濃度の増加ペースが減ったというニュース。

CO2濃度の増加ペース急減 コロナで経済低下も要因(20/04/13)

人間が活動しないことによって感染リスクを下げるのみならず、CO2排出も減らせて環境にも優しいというニュース。皮肉というか不思議というか。

そして興味深いのが「都市の振動」も減っているという。

新型コロナ、地震計がとらえたロックダウンの静寂
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/040900225/

確かにそう言われてみればそうなんだけど、なぜかとても意外な感じがしました。大地は人間の音でうるさかったんですねえ。

もしロックダウンによって地球そのものの振動が聞こえてくるならば、なんだか神秘的です。太古の人類は大地の音を聴いていたのでしょうから。

そもそも人間の命を脅かすウィルスがなぜ人類にやってくるのか? それは森を破壊したから、かも知れません。

“例えば、われわれが森を破壊すると、森にいるさまざまな種の動物が近接して生きていかざるを得なくなり、その結果、病気が動物から動物へと伝染する。そして、病気をうつされた動物が人間と密接に接触するようになり、人間に伝染する可能性が高まる”
コロナパンデミックの原因は「動物の軽視」 霊長類学者グドール氏
https://www.afpbb.com/articles/-/3278221

自然を破壊してたら新型コロナウィルスがやって来て、自粛したら感染が終息して、自然環境が良くなったとしたら。そして、人間社会がテクノロジーを使って繋がり、静かに大地の音楽を聴くようになって、動物たちを大切にするようになったとしたら。

新型コロナウィルスって一体なんなのだろうか?

最後にこの歌をどうぞ。

メメントモリ


【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/断酒96日目】
(100日後に飲酒しないワシ)

武 盾一郎が描いたアマビエ



ポオ エ ヤヨが描いたアマビエ



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