【羽化の作法 42】絵画が自ら増殖していくイメージを求めて

●徹夜して始発でBERG

1996月10月19日〜1997年1月4日までの間の制作ノートはない。なぜなら段ボールハウスに絵を描いてる時に、脇に置いてあったリュックを盗まれてしまったのだ。
中にはメガネと制作ノートと豚毛の筆が入っていた。僕にとっては非常に重要なものばかりだが、盗んだ側からしたら残念だったろう。
僕らは段ボールハウス絵画の制作中、通常リュックを背負って描いていた。盗まれるのを警戒したから、というのもあるがそれよりも通行人に背を向けて丸腰で描いてるので、背中が無防備で怖かったからである。

制作ノートは97年1月4日(土)から始まる。

制作ノートNo.8
1997年1月4日(土)
画像右側のオバQのモデルは新宿ベルク副店長・写真家の迫川尚子さん


「徹夜して始発でBERG」と記してある。
(BERG〈ベルク〉はJR新宿駅東口改札を出て階段を降りる手前にあるカフェ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%A2%26%E3%82%AB%E3%83%95%E3%82%A7BERG

タケヲと「無一色×創庫(むいしき そうこ)」というユニット名で、ベルクで展示をしていたのだ。

タケヲが様々な紙を様々な形に切って、どんどん僕に渡していく。その紙に僕がペン、アクリル絵の具など様々な画材を使ってドローイングしていく。
それらを大量に用意してベルクの壁や天井で繋げていく。といった、ひとつの「絵画生命体」のインスタレーション。(写真が見つからない)
「絵画が絵画自身で増殖していくイメージ」というのが、自分の絵画観だった。それは現在描いてる『線譜』の制作プロセスの中で受け継がれている。

ちなみにこの日のノートに描いてある「オバQ」のようなキャラクターのモデルは、新宿ベルク副店長・写真家の迫川尚子さんである。名前は「サコQ」。

制作ノートNo.8
1997年1月4日(土)
この画像の「オバQ」のモデルは新宿ベルク副店長・写真家の迫川尚子さん
名前は「サコQ」


このノートに描いた「サコQ」を元ネタにして、タケヲが作った人形がこの「サコQ人形」である。

「サコQ人形」タケヲ作
制作ノートNo.8の1997年1月4日(土)に描いた「サコQ」が元ネタ


制作ノートより

1月15日(水)
またもや完徹。具合が悪いのは知っているがどうにかごまかして制作してる。

1月16日(木)
始発電車に乗るために5:20AMごろ家を出る。まだ外はまっくら。
高崎線は始発からすでに混んでいる。始発でベルク。
東金屋さんへ。千葉へ向かってガタンゴトン。


「東金屋」とはベルクのソーセージ屋さん。東金屋さんの凄さはこちらを参照。
http://berg.s1.bindsite.jp/sako2/cn23/craft-kohno.html

ところで、なぜ僕たちが東金屋さんに行く必要があったのか?

それは、この頃にベルクは新メニューを出すのだが、そのポスターを描いて欲しいと頼まれたからである。そこでベルクの「味の元」であるソーセージを作ってる店に行って見て来たのだった。

ベルクの新商品は今や定番となっている『ジャーマン・セット』である。
http://www.berg.jp/menu/teibanset/teibanset.htm
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF+%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88&tbm=isch

僕たちが作ったポスターの画像がないのがまことに残念である。

32時間以上は寝てない僕は、この日のノートに「思い出深い一日となるでしょう」と記している。

制作ノートNo.8
1997年1月16日(木)


●逮捕がもたらした変化

どうも逮捕以降、体調を崩してるようだ。
段ボールハウスの画面にギューっと一点に集中していたエネルギーがありとあらゆる方向に破裂して行くようだった。
「逮捕」というちょっとだけ凄そうなことをしたからにはそれ以上の実績・アーティストとしての証明が欲しかったのだろう、何かに追い立てられるような焦りが常に付き纏っていた。「自分は何か大切なことをやってる」という実感を強烈に欲し、それは「寝ないで無理をする日々」になって行った。

それから逮捕後の変化としてタケヲと1つの画面でコラボレーションすることをしなくなる。自分としては同じ画面で混ざりあるカオスのような状態を続けて行きたかった。分業がはっきりしたコラボレーションではなくて、仕事自体も溶け合って混ざるコラボレーションを続けたかった。
この距離感をマイナスにしてしまうコラボレーションは奇跡的ではあったのだが、それは個体を失った依存的な状態でもあって、逮捕をきっかけにお互いに距離が出来てタケヲとはもうそのようなコラボレーションは続けられなくなってしまったのである。
多分このことが自分にとって意外な程の寂しさで、そのストレスから藁をも掴むような気持ちで他の依存先を探して活動範囲を広げて行ったのだ。
(つづく)


【武盾一郎(たけじゅんいちろう)/断捨離リフォーム今週大詰め】
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