ネズミに恋したネコのタムちゃん (本文とは関係ありません) |
新型コロナウィルスが世界中を騒がしています。
体調を崩されている方は早く良くなりますよう、
お見舞い申し上げます。
今、世界中が
「インフォデミック」
(Infodemic:情報の伝染という意味のinformation epidemic を短縮した言葉)
になってるようです。
それは、ちょっと前にマスクが品切れになることから始まりました。
その時は「へー、そうなんだぁ」程度に思っていたのですが、
除菌用ウェットティッシュもなくなる。
そして学校が休校になる。イヴェントもバタバタと中止にる。
なぜかトイレットペーパーまでもがなくなる。
地元のウェルシアに行ったら、本当にウェットティッシュが売り切れている。
開店前のドラッグストアに行列ができる。。
かつてオイルショックで、
トイレットペーパーを買い漁ってるテレビ映像を思い出したりしますが(1973年)、
日本ローカルだけに起こっているのではないところが違います。
世界中で店の棚がガラガラになったりしている。
日常が日常のまま、
あれよあれよという間に奇妙な状況に変形して行く。
そしてそれも日常に呑み込まれ、
何かがおかしいと感じながらも
いったい何が異常なのかも分からなくなってゆく。
なんとなくアニメ映画『風が吹くとき』を思い出したりしました。
『When The Wind Blows(1986)Trailer』
新型コロナウィルス自体は、
世界核戦争のような人類滅亡してしまう超ド級の危機ではないように思えるのに、
状況がどんどんエスカレートしている。
しかし私は悲観してません。ざっくりとこう考えます。
社会がもうすでに変わらなけばならない程の状態になっていたんです。
新型コロナウィルスは、それ自体に人類を滅亡させる威力があるワケではない。
どちらかというと、派生する情報によって社会変革のトリガーとなっているのだ、と。
ウィルスによって生物は進化してきたという説があります。
▶︎『ウイルス進化説』
今回の騒動でリモートワークにする会社もどんどん増えてます。
▶︎『新型コロナウイルス 大手企業で在宅勤務への切り替え広がる』
Zoomを活用した在宅授業を行ってる先生もいるようです。
(授業の動画がYOUTUBEにあったのですが削除されてました)
在宅勤務・学習に大きく動いてる感じです。
今まで散々言われてきたけど、なぜかそうならなかったオンライン化が、
ウィルス感染の恐怖のおかげで変わってきたのです。
この「インフォデミック」現象は、
「ウィルス進化説」と似たような役目を果たしているように見えませんか。
現在飛び交っているニュースに、
「新型コロナウィルスそのものの危険性は本当はどうなのか?」
という本質問題は、あんまり取り沙汰されていないのが面白いところ。
そこで思い出したのが「科学にまつわる物語」です。
●核(コア)とそれにまつわるモノ
科学を話題にする時によく出てくる、お決まりのストーリーがあります。
かつて人類は(と言ってもキリスト教圏のお話だが)「天動説」を信じていました。
ところが、
「本当は地球の方が動いてるんじゃね?」
と、コペルニクスが「地動説」を唱えた、
「コペルニクス的転回」のお話です。
その物語には
「地動説を唱えた科学者たちは当時キリスト教によって迫害されたが、やっぱり科学が真実であった」
という
「迫害された科学の勝利の物語」
がくっ付いていて、むしろこの方が印象に残っていたりしませんでしたか?
しかし、実はこれはフェイクだというのが現在の見解だそうです。
“地動説について言及する際に、必ずといっていいほど、地動説がキリスト教の宗教家によって迫害されたという主張がされる。ローレンス・M・プリンチペは、「科学者」と「宗教家」の勇壮な戦いという19世紀後半に考案され普及した闘争モデルは、現在(2011年)においては、科学史家は皆否定していると述べている。”
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E5%8B%95%E8%AA%AC
どうやら地動説を唱えた科学者たちは、
迫害なんかされていなかったようなのです。
「迫害や弾圧に耐えて勝利してきた正義の物語」という
「フェイクニュース・ストーリー」は、
事実より強く感情を揺さぶりますし伝搬力もあります。
過剰に捏造された物語によって
「(正確さがウリの)科学」が広がったとすると、
なんだか想像力が掻き立てられます。
だから故なのか「科学的といわれてるコト」に対する、
アンチを作ってしまってるのかも知れないですけどね。
マルクス主義の思想自体は良いところあるのに、
マルクス主義者たちの言動によって
「20世紀の間違ったイデオロギー」になってしまったように。
ゴーダマシッダールタの説いたことは偉大なのに、
女性のお坊さんをほぼ見かけないとか、
葬式仏教のイメージのおかげで
「釈迦の教え」に耳を傾ける気にならなくなってしまうように。
そして多分、マルクス主義もブッダの教えも、
その本質を正確に答えられる人はほとんどいない、
私も含めて。
ふわっとしたイメージで、
なんとなく分かった感じになっているだけなのである。
地動説にせよ天動説にせよ、
その核(コア)にどんな数学が使われていたのか、
知ってる人はほぼいないように。
私も頑張ってググりましたが、
まるで手がかりがありませんでした(笑
「核(コア)そのもの」よりも、
「それにまつわるモノやコト」で
人間社会は動いているんですよね。
●天動説(昔の宇宙観)の図はなぜグッと来るのか?
ところで「天動説」の絵ってどういうのを思い出しますか。
こんな感じのとかでしょうかね?
〈図A〉 |
またはこんなイラストとか。
〈図B〉 |
なんだかグッときますよね。
〈図A〉はご存知「古代インドの宇宙観」です。
いやあ、神秘的ですよねえ。
やっぱり太古の宇宙観はこうでなくっちゃ!
って思いますよね。
ところがです。
これ、「フェイク」なんです。
知ってました?
「巨大カメがいて、その上に象が立っていて、
その上に私たちが暮す地上があり、
巨大な蛇が天球を形作っている」
などという宇宙観を、
古代インド人が記述した文献は何一つないそうです!
じゃあ、このイメージは一体なんなのか?
これは、1822年にドイツで出版された
"Glauben, Wissen und Kunst der alten Hindus"
(古代インド人の信仰、知識と芸術)の挿絵です。
このような宇宙観が描かれたのは、
これが最古なのだそうです。
あたり前のように古代インドの神秘だと思っていたイメージは、
19世紀ドイツで出版された
ヨーロッパ人によるアジアへの
オリエンタルでエキゾチックな偏見によって描かれた、
厨二病的妄想図だったのです。
これに関するツイートがあります。
— アヒール (@keep_on_mono) September 17, 2017
— アヒール (@keep_on_mono) September 17, 2017
「インドそのもの」よりも、
「インドにまつわる妄想や偏見」を描いた方が
真実っぽく、そして魅力的になってしまう
ということなんでしょうねえ。
そして〈図B〉です。
天動説時代の宣教師が、地上の果てに来てしまった図です。
これもまた神秘的ですよねえ。
地上の果ての外側には、
宇宙を動かす機械の歯車があって、
厨二心鷲掴みです。
で、ですね、これ、
実は中世に描かれた地球平面説を表す図ではありません。
19世紀の木版画なんです。
めっちゃ近代なんです。
こちらは作者も分かっています。
カミーユ・フラマリオン。天文学者でSF作家なんですねえ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%A6%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3
この図に出てくる地球は平らです。
天動説と言えば自然と地球は平面のイメージですよね。
「地球平面説」と「天動説」はイコールのイメージです。
「コロンブスの時代まで人類は地球が平らだと信じていた」と。
実はですね、これも「フェイク」なんです。
以下『地球平面説という神話』より
“アメリカで1919年に出版されたエマ・ミラー・ボレニウスによる教科書は、コロンブス・デーの推奨図書に対する以下の序論から始まっている:(↑そう、私も学校でそう教わった気がする! けど違ったのか。。。なんの記憶だったのだ?)
コロンブスの生きていた当時、人々は地球が平らだと考えていた。船を貪り食う巨大な怪物が大西洋に満ちていて、脆弱な船が落ちて壊れてしまう恐ろしい滝が大西洋の向こうにあると彼らは信じていた。
コロンブスは船員を集めるために、この愚かな思い込みと戦わなければならなかった。彼は地球が丸いに違いないと考えていた。”
“地球平面説という神話(ちきゅうへいめんせつというしんわ)は、近代に生まれた誤解で、中世西欧では地球球体説ではなく地球平面説がはびこっていたという謬説である”
地球平面説という神話
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%B9%B3%E9%9D%A2%E8%AA%AC%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E7%A5%9E%E8%A9%B1
天動説の図が魅力的なのは、
フェイクだからだとは言えませんかね。
なぜフェイクイメージ(虚構)は魅力的なのか?
それは作者が、
ウキウキと想像を勝手に膨らませて描いたからではないでしょうか?
事実かどうかによらず、
「魅力」とはそういう性質を根源的に携えているのでしょう。
じーっと考えてると、
「事実」と「虚構」の違いが分からなくなってくるのですけどね。
最後にもうひとつ、天動説の魅力をご紹介します。
こちらのGif画像は
「地動説(太陽中心)」と
「天動説(地球中心)」の星の動きです。
あなたはどちらがワクワクしますか?
【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/断酒53日目】
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星野智幸コレクションII サークル
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星野智幸コレクションIII リンク
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星野智幸コレクションIV フロウ
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b278897.html
日刊デジタルクリエイターズ『羽化の作法[102]現在編 嘘は魅力的/武 盾一郎』より修正編集しました。
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