メアリーの部屋:引き篭った部屋から飛び出したら学びは得られるのか?

〈 13月世の白雪姫(Dr. Snow White)シリーズ 〉
『メアリーの部屋で始まりの扉は開く』
《鍵穴の林檎》の中の色のない部屋に棲む少女メアリーはなんでも知ってる物知り精霊。
霧の國に棲む白雪姫シンニードに霧の國の外にも世界があることを教える。
ガブリエル・ガブリエラ 2023年


「メアリーの部屋」とは、「人間の意識や体験は物理的知識だけで説明できるのか?」を問うフランク・ジャクソンの提唱した有名な思考実験です。

📖【どんな話?】
  • メアリーは天才科学者。
  • 生まれてからずっと白黒の部屋で生活していて、色を一度も見たことがありません。
  • しかし、彼女は「色」に関する物理学・生理学・神経科学のすべての知識を持っています。(例:「赤色の光は何ナノメートル」「脳がどう反応するか」など)

➡️ そんなメアリーがある日、初めて部屋の外に出て「赤いバラ🌹」を見ます。

❓【ここでの問い】
「そのとき、メアリーは“新しい何か”を経験するのか?」
つまり──

🟥 知識はすべて持っていたけれど、「赤を見る」という体験=クオリアは、知識だけでは得られない“別の何か”ではないか?

この問いは、次のような問題を突きつけます:
「意識や主観的な体験(クオリア)は、物理や情報だけで説明できるのか?」



🧠【茂木健一郎さんの解釈】

『フランクジャクソンの「白黒の部屋」の「メアリー」の知識議論について』


<特徴>
クオリアは現象学的構造にすでに含まれている
 → 知識だけでなく「理解=意識的体験」には、すでにクオリアが潜在的に入り込んでいると考える。

物理主義では“意味の次元”が欠けている
 → 脳活動の記述(数式や変数)だけでは、「意味」「経験の質」が説明できない。

メアリーの知識には現象学が既に含まれている
 → 完全な知識を得ているなら、ある意味で既に色の“理解”をしている=クオリアも含まれている可能性がある。

ダニエル・デネット批判への視点
 → デネットの「機能主義」はクオリアを軽視しているが、実際には言語にもクオリア的な要素が入り込んでいる。

<結論>
物理主義的な知識の記述の中にも「現象学(=クオリア)」がすでに入り込んでおり、完全に切り離すことはできない、という「現象学的・統合的な視点」。


🤖【ロボマインド(田方)さんの解釈】

413.【クオリア】ってそういう意味だったの?!意識理論の意外な落とし穴 意識の表象理論 マリーの部屋  #ロボマインド・プロジェクト


<特徴>
「表象理論」によって説明のギャップが解消できると主張
 → 意識とは「表象を扱うシステム」であり、クオリアは「意識が表象に向けられる経験全体」と考える。

経験は脳内の神経発火パターンで物理的に再現可能
 → 「赤」を見た経験も、神経発火として説明できる=物理主義の範囲内で説明可能。

「マリーの部屋」も、表象理論によって矛盾なく説明可能
 → 「赤を見たときに新しい神経回路が初めて発火した」=物理的事実として説明される。

フランク・ジャクソン自身も後に物理主義(表象理論)に転向したと紹介

<結論>
表象理論や仮想世界仮説により、「クオリア」も含めてすべて物理主義で説明できるという「理論的・情報処理的アプローチ」。


🔍「メアリーの部屋」における茂木健一郎さんとロボマインド田方さんの解釈の比較

📊 観点 茂木健一郎 ロボマインド(田方)
哲学的立場 現象学的アプローチ 物理主義・表象理論支持
クオリアの扱い 知識にすでに含まれている可能性あり 神経活動でのみ発生する経験
メアリーの知識 完全な知識にすでに“色の感覚の種”がある 言語知識ではクオリアは得られない
メアリーの経験 知識に加えられる“理解の深まり” 初体験として新たな神経発火が生じる
物理主義への評価 限界がある 矛盾せず説明可能
主張の方向性 意識の意味や質の重視 情報処理としての意識を重視


以上のまとめと比較はYOUTUBEの文字起こしとロボマインド全文検索のテキストをChatGPTに読ませて要約してもらいました。
自分がやるよりちゃんとまとめてくれるので有り難いです。

茂木さんと田方さんの解説は「解釈の軸」が違っていて面白いです。
興味深いのは茂木さんは物理主義でクオリアを説明するには限界があると言っていて、田方さんはクオリアは説明可能だと言っている点です。


🧑‍🎨メアリーの部屋に対してアーティストはどう応える?


アートは「メアリーの部屋」に、また別の軸を問いかけます。


「これは“見る”ことではなく、“出逢う”ことだ」
「これは“説明”ではなく、“震える”ことだ」


🪞アートはメアリーに鏡を差し出す

白黒の部屋にいたメアリーに、アートは「色」を見せる。
でもそれはただの赤ではなく、「あなた自身の中にある赤」。


つまり、アートはこう問いかけるのです。

「あなたの中にまだ見たことのない“色”があることを、あなたは知っていますか?」



💬最後にひと言

アートとは、「メアリーの部屋」の扉をそっと開けて、
その人が自分自身の“初めての赤”に出会う瞬間を生み出す魔法です。


最後までお読みいただき有り難うございました!

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