音楽標本シリーズ |
なんと、今回で「羽化の作法」100回目を迎えます。読んでくださってありがとうございます。そして柴田編集長、濱村さん、いつもありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。
毎年「今年は特別な年だよなぁ」と思うのですが、2020年も同様、根拠はないのに「今年は本当に特別な年だ」なんて思うわけです。そんなワクワクをほのかに感じながら過ごしていたら、もう一か月経ってしまいました。
さて、私は10年くらい前、ふと「自分の線画は音楽を描いてるんじゃないだろうか?」と思ったことから「線譜」と名付けて発表しています。ただこれは、作品を観て直感的に「この作品は音楽だ」と感じさせた曖昧なものなので、理論体系化したい気持ちがずっとありました。
音楽と絵を結び付ける点が星のようにチラチラとあるのですが、そこに星座を見付けたいのです。
ということで、今回は「音楽と絵」について書いてみようと思います。
デジクリでは同じテーマでいくつか書いてますので、まずはそちらをリンクしておきます。いつかこれらをまとめて体系化できますように。
▶︎ 羽化の作法[81]現在編 カンディンスキーと私〜音と絵の関係について
▶︎ 羽化の作法[88]現在編 聴こえない音楽
▶︎ 羽化の作法[92]現在編 線と音楽
まず、私の思う「音楽」とは以下の3つの特徴があります。
1)基本、見えない
2)楽曲とは限らない
「ノイズ」や「アンビエント」など環境音や自然音
3)聞こえるとは限らない
「ムーシカ・ムーンダーナ(宇宙の音楽:天球が発する音楽)」、「ムーシカ・フマーナ(人間の音楽:人体が発する聞こえない音楽)」など
そして「音」とは音楽の単位要素、分子のようなものなのですが、「音そのもの」も「音楽」と捉えて構わないのが、私の「音楽観」です。これらの音楽観を視覚化したのが線譜と言うワケです。
カンディンスキーは、100年前に音楽を視覚化しました。その他にも音を視覚化した例があるので、それらを書いていきます。
●音の視覚化 妖怪
え? 妖怪? なにそれ? と思われる方もいるでしょう。
ご存知『ゲゲゲの鬼太郎』の作者、漫画家の水木しげるさんが何かのインタビューで「妖怪の正体とは音である」と言ってるのを聞いたことがあるのです。てことは、水木しげるさんは「音」を描いていたことにならないでしょうか。
太古の昔から、人類は様々な妖怪の類いを想像してきました。それはそもそも「音の視覚化」だったのではないでしょうか? 人類の原初的な営みに「音を視覚化する想像」があったのだと私は思うのです。
ただ、妖怪の正体は音、と検索しても見つからなかったので、100%確実かと言われると自信がないのですが。。
ようやくこんなnoteが見つかりました。
“かの水木しげるさんが、こんなことを書いていたのを思い出しました。「音をだす妖怪のほうがもっともらしい。」”
(『妖怪』と『音』を巡る旅、のはじまり。)
確かに無音より、音がした方が、妖怪は怖いし面白い。音とは気配ですからね。
ちなみに、水木しげるさんは「妖怪幻想」というLPレコードを出しています。
“1970年代末、ビクターが「音で見る」をコンセプトにしたオリジナル・コミック・シリーズのうちの一枚で、水木しげる監修によるヴィジュアルとサウンドが一体となった壮大なコンセプト作品。音楽を担当したのは森下登喜彦。”
http://paraisorecords.com/?pid=114009814
こんなレコードを出してるくらいですから、水木さんは「妖怪と音」を結び付けていたことは確かですよね。
ジャケットが線画でちょっと線譜っぽくて嬉しくなります。
●音の視覚化 クラドニ図形
それからクラドニ図形というのがあります。
“金属・プラスチック・ガラス・ボウルなどにピンと張ったラップなどの平面にスピーカーなどで振動を与え音程を変えると、共鳴周波数において平面の強く振動する部分と、振動の節となり振動しない部分が生じる。ここへ例えば塩や砂などの粒体を撒くと、振動によって弾き飛ばされた粒体が節へ集まることで、幾何学的な模様が観察される。”
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%89%E3%83%8B%E5%9B%B3%E5%BD%A2
これはYOUTUBEにけっこう動画がアップされてます。
例えば、これは声をマイクで拾った音で図形を作ってます。
「神が音に託した『指紋』クラドニ図形 ∞ Resonance Square」
こちらは鉄板を弦で擦って音を出して、図形を作っています。
「Chladni Figures - random couscous snaps into beautiful patterns」
これなんかは綺麗ですよね。
「鉄板の上に音が見える? アート 虹色編 大人の科学マガジン with KIDS」
このクラドニ図形、最初に見たときはなんだか不思議でたまらなかったのです。
なぜかと言うと、楽器の出す音って形によって変わりますよね。高い音を出すヴァイオリンの形は小さく、低い音を出すチェロは大きい。そして、弾くポジションや形で出す音程を制御している。
なので私は「形によって音が決まる」と「原因はカタチ」で「結果はオト」と、無意識的に刷り込まれていました。
ところが、このクラドニ図形を見てると、音が形を作っているので因果が逆になり、神秘的に感じてしまうのです。
ひょっとしたら、私たち生命体の形態って「音」によって形成されたのではないかしら? って思ったりするのです。
次も図形です。
●音の視覚化 リサージュ図形
“互いに直交する二つの単振動を合成して得られる平面図形のこと。”
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%B5%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E5%9B%B3%E5%BD%A2
と、Wikipediaには書いてありますが、ちょっとなんのことだかよく分かりませんよね。
これは鳴らした音叉に光を当てて、その反射光を見るというものです。直交させた2つの音叉に光を当てると、音叉の周波数の比で様々な図形が現れるというのです。実験の模様のイラストが見つかったのでこちらを参照↓
どんな図形になるかというと、こんな風になるようです↓
「リサジュー図形」より
音叉に光を当てて見てみようって発想がすごいですよね。まさに音を視覚化したって感じです。
音叉って振動してるわけなので、振り子でもこのような幾何学図形を生成させることができますよね。それが「ハーモノグラフ」という厨二心をワシ摑みする装置です。
●音の視覚化 ハーモノグラフ
“幾何学像を生成するために振り子を用いる機械的装置。生成される図は普通はリサージュ曲線、もしくはより複雑な関連する図である。19世紀中ごろに登場し1890年代に人気のピークを迎えたこの装置は一人の人間に帰属することはできないが、グラスゴー大学の数学教授を務めていたHugh Blackburnが一般的には発明者であると考えられている。”
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95
様々なタイプのハーモノグラフがあります。
例えば、これは「回転ハーモノグラフ」と言って最もポピュラーなタイプです。
「Home-made Harmonograph」
紙を縦にしてるハーモノグラフもあります。
「Simple Coupled Pendulums Harmonograph」
砂で描くハーモノグラフも素敵ですね。
「Harmonograph at Museum of Science Boston」
例えば「文字」を発明する過程は、発語した音を形にするワケですから、それこそ「音の視覚化」ですよね。その文字の形を決める身体は腰、肩、肘、手首、指と沢山の振り子をつなげた、ハーモノグラフのようなものだと思うのです。
●そして耳の穴に指を突っ込む
「クラドニ図形」のところで、私は「音は形の結果」つまり「形→音」だと思っていたけど、ひょっとしたら「音→形」なのではないだろうか? 的なコトを書きました。
最後に、クラドニ図形ではないですが、スピーカーにゲル状のコンスターチをのせて音を出した動画を紹介します。
「non-newtonian fluid on a speaker」
似たような動画はいっぱいあります。これもそうですね。
「Non-Newtonian Fluid on a Speaker Cone」
音の振動によってまるでコンスターチが生きてるように動きます。この動画を見ると、低い周波数ほどエグく動いてるようです。
「Sound and liquid (cornflour mixed with water) experiment」
これら動画が、フェイクかどうか実験してみないと分からないのですが、本当だと思って見るとなんだか興味深いですね。
ここで思い出したのが、耳の穴に指を突っ込む音です。両耳を指でふさぐと、「ゴォー」って地響きのような音が聞こえますよね? これってなんの音なのかな? って思いませんか?
私は血液の流れる音だと思っていたのですが、実は筋肉が動いてる音なのだそうです。
“筋肉は、細い「筋繊維」が集まってできています。私たちが普段何気なく体を動かしているときも、当然ながら筋線維は活動している状態にあります。その筋線維が動いている音が、耳の中で聞こえている音なのです。”
「耳の穴に指を突っ込むと聞こえる「ゴォー」という音って何?」
「これって筋肉が動くから音が出てるのではなくて、身体が音を出して筋肉を動かしてるんじゃね?」ってふと思ったのです。
いずれにせよ、「ゴォー」というかなりすごい音が筋肉で鳴ってるのに、普段の私にはまったく聞こえません。これは「ムーシカ・フマーナ(人間の音楽:人体が発する聞こえない音楽)」なのではないでしょうか?
参照:天球の音楽
最後にカンディンスキーと作品のインスピレーションとなった、シェーンベルクをお届けして締めとさせていただきます。最後までお読みくださって、ありがとうございました!
『印象III(コンサート)』 |
『Arnold Schoenberg: String Quartet No. 2 Op. 10 (1908)』
【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/断酒17日目】
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