死者との対話

絵の制作はオートポイエーシス的である。

白紙から描き始める時、無限の選択肢から一本の線を引く。
線を引きながら、
引かれた線を見ながら、
そこからどのように線を引くかを感覚的に考えながら線を引く。

描き始める初動で描かれる線は決まらない。

動き出した線が紙の状態に変化を与え、
その変化を入力し、次に描く線を考え直しながら、線を動かしていく。

描かれた紙の状態を見ながら、またどんな線を引くのかを考え直して描く。
その繰り返しで線を描いていく。

なので何が描かれるかは自分でも分からない。

そしてそれは生命的である。
制作とは生命なのである



また、
絵で描かれる内容は常に「向こう側」、
つまり「死者との対話」であるのだ。

死者という表現が物騒ならば、描かれる内容は常にファンタジーなのである。
向こう側の世界とのコンタクトなのである。
向こう側とはすなわち「死」なのである。


そして、絵が完成すると、その絵は成仏する。


制作中、作品は生きている。
そして、完成すると絵は死後の世界に到達する。

絵が死後の世界に入ったとき、
生きている私達と対話をする。

絵画鑑賞とは
「死者との対話」と同様なのだ。

それは忌み嫌うものではなく、縁起の悪いものでもない。
むしろ、多大な癒しや発見や活力を与えてくれるものである。

そうありたい。

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