今回の記事は私が全動画をチェックしてるロボマインド・プロジェクトの動画を紹介します。
ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』に書いてある人類最初の革命は「認知革命」。
ちなみに人類には3度の重要な革命がある。
- 7万年前の「認知革命」
- 1万2千年前の「農業革命」
- 500年前に始まった「科学革命(産業革命)」
この中で、個人的に最もそそられたのは最初の「認知革命」だ。
一言で言うと「虚構を信じる能力」なのだが、この最も重要で興味深い革命が今ひとつ分からない。
なぜ、私たち人類が虚構を信じるようになったのか、そこが分からなかったのだ。
それを、自閉症の作家、東田直樹氏の『自閉症の僕が跳びはねる理由2』の内容をヒントに、
「認知革命」をオブジェクト指向プログラムの内容で紐解いたのが今回のロボマインドの動画なのです!!面白い!
結論を言うと「抽象とはプロパティとメソッドを直接認識すること」です。
「オブジェクト」→「プロパティ(オブジェクトの情報)」・「メソッド(オブジェクトの操作)」の認識はできていたけど、さらに
「プロパティ」・「メソッド」→「オブジェクト」の認識ができるようになったことが「認知革命」である、と。
ちょっとこれだと何言ってるかよく分からないですよね。
動画の文字起こしを追ってみましょう。
「抽象」っていうのは「オブジェクト」の「プロパティ」とか「メソッド」といえそうです。
オブジェクト指向プログラムの「オブジェクト」には「プロパティ」と「メソッド」があるのですが、
通常「オブジェクト」を起点として、その「プロパティ」、「メソッド」と見ています。
「オブジェクト」→「プロパティ」、「メソッド」の流れです。
そして、
動画は「抽象」について説明していきます。
そう考えると何が記憶できて何が記憶できないかが見えてきますよね。
まず最初に認識するのは「世界」ですこれが最も大きいレベルです。
その一段下のレベルが「場所」とか「状況」です。
「世界」の一部を切り出したわけです。
これが「朝起きる」とか「出かける」とか「ボーリング場に来た」とかって「状況」です。
「状況」は「オブジェクト」で組み立てられます。
「場所(オブジェクト)」とか「人間(オブジェクト)」とかです。
これが「状況」の一段下のレベルです。
そしてその下のレベルが「オブジェクト」の「プロパティ」とか「メソッド」です。
これが一番細かい段階です。
このレベルのものだけを取り出したものが「抽象」です。
オブジェクトに結びついてない色とか数とかってことです。
世界:現実仮想世界、想像仮想世界など
↓
場所・状況:世界から切り出される
↓
オブジェクト:場所オブジェクトや人間オブジェクトなど場所・状況にある各々のオブジェクト
↓
プロパティ、メソッド:オブジェクトにはプロパティとメソッドがある。色プロパティの赤い、数プロパティの3つ、温度プロパティの寒いなど。歩く、会話、などのメソッド。
↓
場所・状況:世界から切り出される
↓
オブジェクト:場所オブジェクトや人間オブジェクトなど場所・状況にある各々のオブジェクト
↓
プロパティ、メソッド:オブジェクトにはプロパティとメソッドがある。色プロパティの赤い、数プロパティの3つ、温度プロパティの寒いなど。歩く、会話、などのメソッド。
上のレベルを認識するのは簡単です。
だから「状況」とか「場所」に紐付けて記憶して思い出すことはできるんです。
でも下のレベルだけを取り出して認識することは難しいんです。
だから「プロパティ」とか「メソッド」に紐付けて記憶することはできないんでしょう。
世界
場所・状況
オブジェクト
❌
↑
プロパティ、メソッド
そう考えたら東田さんの言ってることも理解できますよね。
「寒い」は「温度プロパティ」なので「プロパティ」に関連付けて記憶することはできないんです。
だから「寒い」と感じた時「上着を着る」とかって行動を思いつけないんです。
それから「メガネが汚れて見えにくくなった」とします。
「見えにくい」って感じも「プロパティ」です。
だから「プロパティ」に関連して「メガネを拭く」行動を結びつけることができないです。
「会話」は「人間オブジェクト」の「メソッド」ですよね。
「うまく会話できない」って感じも「メソッド」だけを取り出してるんで、
それに「文字盤を使う」って「状況」を結びつけるのは難しいんです。
上の状況レベルから下のプロパティに降りていくことはできます。
だから「寒かったら上着を着たら」って提案されると「上着を着る」ことができます。
文字盤を出されたら文字盤を使って会話できます。
つまり目に見える具体的な「オブジェクト」を提示されると、
その「プロパティ」や「メソッド」を使った状況を想像できるんです
でも「寒い」とか「会話」とかって
「プロパティ」や「メソッド」を起点として上のレベルの状況を想像することはできないんですよ。
「プロパティ」や「メソッド」から上のレベルを想像できるようになったのが7万年前に起こった「認知革命」です。
認知革命!
世界
↑
場所・状況
↑
オブジェクト
↑
プロパティ、メソッド
世界
↑
場所・状況
↑
オブジェクト
↑
プロパティ、メソッド
動画から離れるけど、
『言葉の本質/今井むつみ・秋田喜美』では興味深い記述がある。
チンパンジー「アイ」の実験だ。以下の対応を覚えてもらうのだ。
- 黄色の積木→△
- 赤色の積木→◇
- 黒色の積木→◯
「黄色の積木を見せて、△の記号を選ぶかどうか」「赤色の積木を見せて、◇の記号を選ぶかどうか」とテストすると「アイ」ちゃんは完璧に答える。
ところが驚いたことに、逆の「△を見せると、黄色の積木を選ぶかどうか」テストすると、答えられないのだ。
人間は
- 黄色の積木→△
- 赤色の積木→◇
- 黒色の積木→◯
- △→黄色の積木
- ◇→赤色の積木
- ◯→黒色の積木
ここでさらに興味深いのは、この人間の認識の常識は「論理的に正しくない」というところなのだ。
「AならばB」は「BならばA」と同じではない。
つまりチンパンジーの認知の方が「論理的」なのである。
対象→記号の対応づけを学習したら、記号→対象の対応づけも同時に学習する。
人間が言語を学ぶときに当然だと思われるこの想定は、論理的には正しくない過剰一般化なのである。
(言葉の本質/今井むつみ・秋田喜美)
これはこの動画の
オブジェクトからプロパティ、メソッドへは紐づいていても
プロパティ、メソッドからはオブジェクトに結び付かない。ことと同じ内容だと思う。
自閉症の人はチンパンジーに近い「論理的に正しい」認知であろうことが推測できる。
このことが人間社会への適応のハンディギャップになってしまっているのだ。
そんな自閉症の東田さんの高校三年生の時の文章を動画では紹介します。
本当の僕は何の制約も受けることなく
時間という枠を超え
ただひたすら声の限りに叫び
大地をかけていたいのです
あるいは音も言葉もない静寂な水の中で
じっと息を殺し
永遠に続く宇宙の鼓動を感じ続けていたいのです
この文章、涙がこぼれそうになりました。
認知革命前夜、人類が神を捏造する前の世界観です。
芸術とはこの境地に遡ることでもあるのです。
最後までお読みいただき有り難うございました!
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